85歳以上の高齢者の4人に1人がかかると言われる認知症は、今後高齢化社会が進むにつれて、患者が増えることが懸念されています。いつか自分や家族がかかる可能性を考えると他人事ではありません。
認知症の70%を占めるアルツハイマー型認知症を予防する方法について様々な研究が行われています。その中で、運動が認知症と深く関わっていることが分かっています。九州大学が800人の高齢者を17年間追跡調査した結果、週に1回以上運動する習慣のある人は、そうでない人よりも認知症の発症率が40%も低いことがわかりました。
ジョギングや体操などの運動だけでなく、掃除などの家事やガーデニング、エスカレーターの代わりに階段を使うなどの日常生活の中で運動量を増やす心がけが大切です。
左のグラフは700名以上の高齢者を5年間調査し、家事なども含めた活動量の多い人と少ない人の認知症発症率を比較したものです。活動量の多い人の認知症発症率が低くなっています。
また、認知症ではないが、年齢相応より認知機能の低下が見られる軽度認知障害に対して運動を行った場合に、認知症を予防する効果があることがわかっています。軽度認知障害は認知症に移行する可能性が高い反面、場合によって認知機能が正常に回復することもあります。 愛知県大府市で行われた認知機能低下予防プログラムでは、ストレッチ、筋肉トレーニング、有酸素運動などを行った結果、軽度認知障害を持つ高齢者の注意・実行機能や言語・記憶機能の向上が見られたとの分析報告があります。
さらに、運動をしている人の中でも、グループに所属して運動している人は、単独で行っている人よりも認知症の発症率が低いこともわかっています。グループに所属することによって、他者との交流が増え、運動の回数も増えることなどがその理由であると考えられます。