自然界に天然水素が存在することがわかってきました。これまで水素は地球上では酸素や窒素などと反応して水やメタンなどの形で存在し、単体でまとまった量が存在するとは考えられていませんでした。しかし、近年、水素も石油や天然ガスのように自然界で生成され、水素単体で存在していることがわかってきました。人工的に水素を発生させるのとは異なり、温室効果ガスであるCO2を生成しないため「ホワイト水素」や「ゴールド水素」などと呼ばれることもあります。
自然界で水素が生成される主なプロセスとしては、火成岩の一種で、鉄を多く含むかんらん岩が水と反応して蛇紋石に変化する時、その過程で水素が生成されることがあげられます。鉄が水分子から酸素原子を奪い水素を放出するためです。
天然水素は世界各地に広く分布していると考えられ、石油のある堆積岩層にはあまりまれないので、これまでのエネルギー地政学を大きく変える可能性があります。日本でも長野県白馬村の白馬八方尾根温泉で天然水素が観測されています。
現在、水素は発電や燃料電池車などでの利用が注目されていますが、製造コストがかかることが課題となっています。天然水素を安価かつ大量に供給できるようになれば、水素が普及してカーボンニュートラルの実現につながると考えられます。