柿は古くから日本をはじめ韓国や中国など東アジアで栽培されてきた果物です。昔は畑のあぜ道や家の庭先など日本中どこにでも植えられていましたが、近年は農地の整備や宅地化、食生活の変化などによって、経済的に優れた品種に置き換わり、これらが柿の生産地で栽培されるようになりました。今回は柿の栄養効果、産業利用、柿による地域の活性化についてご紹介します。
①柿の栄養効果
柿には抗酸化作用の強いビタミンCをはじめ、カロテン、タンニン、カリウムなどの栄養素が含まれています。
ビタミンCは免疫力を高め、風邪などの病気予防に効果的で、美肌効果もあります。カロテンは強い抗酸化作用を持ち、ビタミンCとの相乗効果で免疫力がさらに高まります。
タンニンは血中の悪玉コレステロールを減少させ、血液をきれいにする働きがあります。 カリウムには利尿作用があり、タンニンが肝臓の解毒作用を助けるため、二日酔いの予防に効果的です。
②柿の産業利用
柿は干し柿や柿酢、柿ジャムなどの加工品としても広く利用されています。これらの加工品は国内市場だけでなく、海外にも輸出されています。加工の過程で出た柿の皮やその他の廃棄部分は、家畜飼料や肥料として再利用されることがあり、持続可能な農業に貢献しています。
柿に含まれるタンニンなどの成分は、肌の引き締め効果や抗酸化作用が期待され、化粧品やサプリメントに利用されています。また、柿渋エキスは抗菌・消臭剤としても商品化されています。
③地域の活性化
柿の生産地では地域の特産品として、柿のブランド化が進んでいます。市町村別で柿の生産量が最も多い奈良県五條市では、ハウス柿の栽培技術を確立させることで、夏から年末までの半年間にわたって柿を出荷できるようになりました。ハウス柿は渋柿の一種である「刀根早生」で、渋抜きをした状態で出荷されるため、購入してすぐ食べることができます。真夏に出荷されるハウス柿は付加価値が高く、優れた地場産品としてブランド化されています。
ハウス栽培の技術により安定的に品質の高い柿を生産できるようになったことで、農家の収入が向上し、若い生産者が集まるようになりました。これらの若手生産者によって五條市では2002年から「柿の里まつり」が開催されるようになり、毎年多くの来場者を集めています。さらに、2019年からはSNSを活用して、柿の生育状況やPR活動に関する写真をこまめにアップしたり、ハウス柿をプレゼントするキャンペーンを開催したりしています。SNSによってこれまでハウス柿を知らなかった層にも訴求することができ、「日本一の柿のまち」を広くアピールし、地域の活性化につながっています。